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連載・コラム

データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第35回

人事データ分析の最適な入り口となる資格認定講座が新設

読了時間:8分

  • 公開日:1970/01/01
  • 更新日:2026/10/16
人事データ分析の最適な入り口となる資格認定講座が新設

人事データの分析・活用に関する基礎知識を認定する新資格「ピープルアナリスト・ベーシック」は、なぜ創設され、何を目指しているのか。資格認定講座のプログラムを開発したキーパーソンである、一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員の長谷川智彦氏に聞いた。

本シリーズ記事一覧
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第34回
分析成果を簡明に伝え人事データの可能性を共有する仲間を増やす
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第33回 土屋実友衣氏/門口佳奈恵氏
因果分析のデータと人事の「肌感覚」を対話ですり合わせる
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第32回 福山晋太郎氏
従業員の本音をAIが引き出すことでエンゲージメントを向上
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第31回 夜久真也氏/山内智氏/佐久間祐司氏
360度評価に潜むバイアスをアルゴリズムで除去
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第30回 菅崎理功氏/河村桂氏
HRBPとCoEが連携し人事データの活用を「社内文化」にする
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第29回 新藤涼子氏/笹山悦宏氏/丸山晃平氏/南條秀典氏
LLMでアンケートの自由記述回答分析を大幅に省力化できた
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第28回 武田邦敬氏
ピープルアナリティクス浸透のカギは文化とリーダーシップ
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第27回 萩原章義氏
テクノロジーに精通したヒューマニストでありたい
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第26回 大成弘子氏
仏教×データ分析で働く人の幸福度を高め企業創りを支援する
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第25回 三好淳一氏
生成AIが普及したら人間ならではの仕事を行う姿勢が大事になる
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第24回 藤本真氏
データ活用の際に人事に必要な調査リテラシーは何か
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第23回 藤澤優氏
定量・定性の両面から現場にアプローチして人と組織を理解する
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第22回 仁平純一氏/高原大輝氏/中村友紀氏
適性タイプ分類モデルでバランスよく多様な人財の採用に成功
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第21回 土橋隼人氏
社員の「ワクワク感」を高めるEX観点を日本の常識にしたい
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第20回 鹿内学氏
「信頼」を科学してイノベーションを生み出す日本にしたい
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第19回 佐久間祐司氏
「人事の脱エクセル」が進む可視化中心のピープルアナリティクス
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第18回 大湾秀雄氏
経営と目線を合わせたピープルアナリティクスが今後の鍵になる
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第17回 小島武仁氏
マーケットデザインとマッチング理論で適材適所を促進する
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第16回 トラン チー氏
負荷を増やさずに人事データを民主化し意思決定を変える
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第15回 加藤茂博氏/小澤ひろこ氏
人的資本投資の開示・マネジメントツールISO30414
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第14回 大村大輔氏
データサイエンスとビジネスの橋渡しが最も大事で難しい
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第13回 佐藤優介氏
他社が始めたから自分たちも、という意思決定でよいのか
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第12回 中村公洋氏
スマートビルが横や斜めのつながりを増やして創発を促す
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第11回 山田隆史氏
アナリティクスを人事の現場に普及させたい
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第10回 松本勝氏
創造性を科学し社会価値創造のエコシステムを作る
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第9回 前田頼宣氏
NAONAで1on1ミーティングをもっと良いものに
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第8回 渡辺啓太氏
伝え方次第でデータの効果は0にも100にもなる
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第7回 山田裕一朗氏
グローバル市場で技術力で勝つ日本企業を増やしたい
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第6回 三好淳一氏
人事系データの分析課題の多くは「可視化」で解決できる
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第5回 長谷川清氏
最後のフロンティア“脳”の計測技術が生活の質を向上させる
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第4回 河本薫氏
人事部門に必要なデータ活用には特有の難しさがある
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第3回 中村亮一氏
ピープルアナリティクスで人財ポートフォリオの転換、社員の活躍促進を目指す
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第2回 渡辺祐樹氏
これからの人工知能はパーソナル化して“感性”に最適化される
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第1回 岡田謙介氏
「統計モデリング」には人事のあり方を変える力がある
データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 第35回
人事データ分析の最適な入り口となる資格認定講座が新設
資格講座開発に加わった経緯とは
技術的背景のない人事でもデータ分析の初歩が学べる
知識と経験則のバランスに留意しつつ講座内容を設計

資格講座開発に加わった経緯とは

入江:長谷川さんは大学院でどんな研究をしていたのですか。

長谷川:植物の遺伝子組み換え技術です。そこで実験データを正しく分析するため、統計を学びました。

入江:その知識を買われてパーソルキャリアに入社され、データサイエンティストになったのですね。

長谷川:入社からしばらくは、事業部で使われるAIモデルの開発などを担当しました。そして、2022年に人事データの積極活用方針が社内で打ち出されたのを機に、社内の人事データ活用部門の立ち上げを推進しました。

入江:人事領域に移ったとき、どんなふうに感じられましたか。

長谷川:最初は戸惑いました。事業に携わっていた頃に扱っていたのは、売上額やリードタイムといった効果が分かりやすい指標がほとんど。一方、人事では効果が分かりづらく、かつ、デリケートで曖昧なデータも取り扱う点で大きく違うと感じました。

入江:人事領域でも多くの活動をされていますが、今回の資格講座の開設はどういった経緯で決まったのでしょうか。

長谷川:協会の代表から、ピープルアナリストの裾野をより広げていくための資格の構想を聞き、そのなかで企業における人事データ活用の普及の重要性を説かれ、それに賛同するような形で資格講座の開発を手伝うことになったという流れになります。

技術的背景のない人事でもデータ分析の初歩が学べる

入江:協会は2026年3月、「ピープルアナリスト・ベーシック」資格認定講座の新設を発表しました。こちらの概要について教えてください。

長谷川:ピープルアナリストは、人事データを収集・分析して経営や現場に役立つ洞察(インサイト)を提供し、人事の意思決定を支援する役割です。本資格認定講座は、eラーニングでピープルアナリストに必要な基礎知識を体系的に学習するもので、試験合格者には認定バッジが配布されます。

入江:この講座ではどんな知識が学べるのでしょうか。

長谷川:大まかにいうと3分野に分けられます。1つ目は、人事データ活用プロジェクトをマネジメントするための基礎知識。2つ目は、仮説構築・分析計画からデータ分析、レポーティングまでの大まかな流れ。そして3つ目が、人事データ保護をはじめとするデータリテラシーの知識です。講座は全16コマで、1コマあたり10~60分程度。トータルの受講時間は10~15時間程度となっています。

入江:協会ではすでに、中級者向けeラーニング講座「R/Pythonによる人事データ分析入門」を提供しています。それとは別に、ピープルアナリスト・ベーシックの資格認定講座を開設したのはなぜですか。

長谷川:「R/Pythonによる人事データ分析入門」には、プログラミング言語によるコーディングやグラフ作成法、回帰分析の手法など、それなりに難度の高い内容も含まれています。そのため、これらに馴染みのない人事担当者にとってはハードルが高く、途中で挫折する人も少なからず存在していました。そこで、もっと初級者向けのプログラムを提供したいというのが、本講座を作ったねらいです。

入江:なるほど。すでに第1回の講座は始まっていますが、受講者はやはり人事畑の方が多いのでしょうか。

長谷川:人事の方もいらっしゃいますが、受講者のバックグラウンドは多種多様です。ただ、データ分析の経験がほとんどない方も想定して、専門用語をできるだけ使わないよう工夫したり、イラストを多用したりすることで、初学者でもついていけるレベル感を目指しています。

入江:講座ではプロジェクトマネジメントの基本についても学ぶのですね。

長谷川:はい。人事データ活用プロジェクトを企画する際には、関係者の巻き込み方やスケジュールの立て方、業務フローの整理法といった知識も求められます。ところが人事担当者のなかには、これらを体系的に学んだことのない方もいるのではないでしょうか。そうした方が私たちの講座を受講すれば、プロジェクトの進め方がガラリと変わるのではと考えています。

入江:なるほど。定常業務の比率が高く、プロジェクト型業務の経験が少ない人事担当者にとっては、基本的な知識を学べる良い機会かもしれません。

長谷川:そうなれるよう頑張っています。また、人事データを扱うときには倫理面での配慮も欠かせません。そこでこの講座では、データリテラシーに関する要素も盛り込んでいます。

知識と経験則のバランスに留意しつつ講座内容を設計

入江:講座の内容を決める上で、苦労した点はどこでしたか。

長谷川:教科書的な知識と実践的な経験則のバランスをどうとるのか、悩みました。人事データ分析を行うには、分析手法から最新テクノロジー、さらに人事ノウハウまでの幅広い知見が必要になります。一方、この講座は「資格講座」ですから、現場に根ざした暗黙知をどこまで学習内容に盛り込むべきか、協会内で議論を重ねました。

入江:人事は「これが唯一の正解だ」と言い切れる世界ではありません。ですから、経験則や暗黙知をどこまで教えるかは難しいところですね。その意味で、講座では現場で繰り広げられた具体的な事例も教えるのですか。

長谷川:いいえ。事例に興味をもつ人は多いですし、そこから学べることも豊富です。ただ、紹介するためには各企業の許可が不可欠ですし、そもそも企業によって文化や課題が異なりますから、ある企業でうまくいったやり方が他の企業でそのまま通用するわけでもありません。そのため、講座ではあくまで知識習得に的を絞り、事例については協会が定期的に開いているセミナー「ピープルアナリスト最前線」で紹介しています。

入江:細心の注意を払ってカリキュラムを設計しているのですね。一方、最近の人事領域では生成AIや機械学習に対する関心が高まっていますが、この講座ではこれらに触れますか。

長谷川:実は、あえてカリキュラムからは外しました。人事がAIを活用したいと思っても、分析環境の整備やデータ格納場所の確保といった問題をクリアするまでにはかなりの手間と時間がかかります。また、高度な分析は自分には関係ないとなってしまうよりも、親しみ深いExcelを通して、分析の基礎を身につけて実務にすぐ生かせることに重きを置きました。例えばクロス集計の手法を学ぶだけでも、人事が抱える課題のうちかなりの部分が整理できたりします。そうして小さな成功を積み重ねてもらい、将来につなげてもらうことを、私たちは重視しています。

入江:分かります。人事のなかには、人員不足で「ひとりピープルアナリスト」がデータ分析に孤軍奮闘しているところも少なくありません。そうした現場で、ピープルアナリティクスについて学んだ人たちが知識を実際に役立てられれば、組織を良い方向に変えたり仲間を増やしたりできますね。

長谷川:この講座は学びのゴールではなく、人事データ分析という長い旅の始まりだと考えています。人事担当者はもちろん、事業に携わるなかで人事データ分析に触れたいと考えている人にもスタート地点として活用していただけると、私たちも嬉しいです。

【text:白谷 輝英 photo:伊藤 誠】

ピープルアナリティクスに挑戦しようと思っても、何から、どう手をつけてよいか、迷われる方は少なくないと思います。先進的な事例が増える一方、それらは「自分では難しい」と感じることも少なくないと思います。

そのような状況に対し、「人事データ活用を憧れで終わらないようにしたい」という長谷川さんが、仲間と共に作られた講座は、初学者の方の手助けになるものだと思いました。

講座を受けられない方も、Excelでできることも多いということや、チームでのデータ分析においてはプロジェクトマネジメントの方法が生かせるということなどを、学びとしていただければ幸いです。

※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.83連載「データサイエンスで「個」と「組織」を生かす 連載第35回」より転載・一部修正したものです。
RMS Messageのバックナンバーはこちら。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE

長谷川智彦(はせがわともひこ)氏
一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員

大学院では植物の遺伝子について研究。2020年にパーソルキャリアへ新卒入社し、データ分析案件やAIモデルの開発・改善、データ活用プロジェクトの企画・マネジメントを手掛ける。2022年から人事領域でのデータ活用やBI開発、人材育成に取り組む一方、2024年以降はピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会*でも活動中。

*産・学・官の協力により、ピープルアナリティクスと、それを牽引するHRテクノロジーの普及を促進する団体。人事データの分析・可視化により、個人と組織の未来のため経営を変革することを目指す。

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