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ミドルマネジャーの孤軍奮闘を終わらせる対話型リーダーシップ開発

これからの時代に求められるリーダーシップとは?

読了時間:10分

  • 公開日:1970/01/01
  • 更新日:2026/10/08
これからの時代に求められるリーダーシップとは?

「マネジャーには現場から新しいアイディアを上げてほしいと思っているがなかなか出てこない」「ピープルマネジメントの負荷が高く、疲弊してしまっているように見える」――人事担当者や経営層からこうした声を聞くことが増えている。マネジャーは今、どんな状況に置かれているのだろうか。現代のマネジャーに求められるリーダーシップという切り口で解決策のヒントを見いだしたい。

今、マネジャーに何が起きているのか
「リーダーシップ」の概念を問い直す
なぜ関係性なのか――放置できない理由と優先すべき根拠
関係性を変えるための実践――対話とナラティヴ
組織開発へのつながり――マネジャーの変容が組織を変える
対話型リーダーシップ開発施策の一例

今、マネジャーに何が起きているのか

目まぐるしく変化する環境のなかで、短期的な成果と中長期的な変革の両立を求められ、多様なメンバーをまとめながら、新たな価値を創造することを期待される。メンバーにもっと動いてほしいと思っても、これ以上負荷をかけることへの躊躇がある。結果として「自分がやるしかない」と抱え込み、疲弊しながらも孤軍奮闘し続けている――それが多くのマネジャーの実態ではないだろうか。

この状況の要因は、マネジャー自身の能力や意欲ではない。むしろ、マネジャーがもっている「リーダーシップ観」が、時代の要請と合わなくなってきていることを示唆している。「マネジャーがリーダーシップを発揮し、周囲を引っ張らなければならない」「魅力的なビジョンを打ち出して、メンバーをモチベートしなくてはならない」――こうした無意識の前提が、マネジャーを孤立させ、組織の力を引き出すことを妨げているとしたら。

本稿では、こうした問題意識のもと、これからの時代に求められるリーダーシップの概念を問い直し、その実践に向けた考え方を提示したい。

「リーダーシップ」の概念を問い直す

「リーダーシップ」という言葉を聞いたとき、多くの人はどんなイメージをもつだろうか。強い意志をもったリーダーが組織を引っ張り、メンバーはそれについていく――そうした「統率型」のリーダーシップを想像する人は、今もなお少なくない。

しかしこのイメージは、メンバー一人ひとりが自律的に行動し、協働して成果を上げる自律共創型組織への転換という潮流と、相反している。「引っ張るリーダー」と「自律するメンバー」は、構造的に矛盾するからだ。リーダーシップについての概念を更新することなしに、自律共創型組織の実現は難しいともいえる*1。

リーダーシップ研究の歴史を振り返ると、その焦点は変化してきた。20世紀初頭に始まった初期の研究では、優れたリーダーに共通する「資質」に着目する特性論が主流だった。その後、リーダーのとる「行動」に着目する行動論へと移り、さらにメンバーの状態やリーダーとメンバーの関係性に着目する研究へと発展してきた。

こうした変遷のなかで近年注目を集めているのが、「シェアド・リーダーシップ」という考え方だ。シェアド・リーダーシップとは、「職場やチームのメンバーが必要なときに必要なリーダーシップを発揮し、誰かがリーダーシップを発揮しているときには、他のメンバーはフォロワーシップに徹するような職場やチームの状態*2」と定義される。リーダーとフォロワーが流動的であり、特定の人物ではなく多数の人物にリーダーシップが分散するという特徴をもつ。

シェアド・リーダーシップが注目される背景には、不確実な環境のなかで「1人のリーダーが正解を出すことの限界」が顕在化してきたことがある。多様な専門性をもつメンバーがそれぞれの強みを発揮し、状況に応じてリーダーシップを担い合うことが、変化への適応力と創造性を高めるとされる。

さらに、もう一歩進んだ概念として「関係性リーダーシップ」の考え方を共有したい。「関係性リーダーシップ」とは、リーダーシップはリーダー個人の特性や行動だけで決まるものではなく、他者との関係性のなかで生まれるものだという考え方である。この「関係性」という概念は、リーダーシップを個人の属性で説明しようとする考え方への根本的な問い直しから生まれた。

リーダーシップはポジションに宿るのではなく、人と人との間に生まれるプロセスに宿るものという考え方である。「説得力のある文章やスピーチによってリーダーシップを発揮することもできるが、ほとんどのリーダーシップは、個々人や集団のメンバー間のやり取りのなかで生まれる*3」とあるように、リーダーシップは日々の他者とのやり取りのなかに立ち現れてくる、継続的な営みなのである。

こうした流れを踏まえると、改めて強調したいリーダーシップの定義は以下のように表現できる(これまでに同様の定義は多くなされてきたが、今日性が表現されているものを参照して定義)。
「人々が自分らしさと主体性を発揮しながら、組織の目的に向かって貢献し続けられるように影響を及ぼすプロセス」

リーダーシップは「プロセス」であり、だからこそリーダーとフォロワーの関係性が重要となる。また、リーダーシップはポジションに拠らず、誰もが発揮できるものだ、といえる(図表1)。

<図表1>リーダーシップの定義

なぜ関係性なのか――放置できない理由と優先すべき根拠

リーダーシップが関係性のなかで生まれるプロセスだとすれば、マネジャーが今直面している現実の課題に照らしたとき、関係性への働きかけはどういった意味をもつのか。もう少し具体的に見ていきたい。

現在、マネジャーが直面している課題の多くは、知識やスキルをさらに身につけることで解決できる性質のものではない。「チームに一体感がない」「メンバーが自律的に動かない」「上司と方向性が合わない」――こうした課題は、管理の仕組みを整えたり、指示を明確にしても解決しない。これらは「適応課題」と呼ばれるものであり、自身のものの見方や、周囲との関係性を変えることでしか解決に近づけない課題だからだ。こうした現象を「相手を変えることで解決しよう」とすればするほど、周囲とのすれ違いが生まれていく悪循環に陥りがちである(適応課題とは、ハーバード大学のロナルド・ハイフェッツが提唱した概念で、知識やスキルで解決できる「技術的問題」とは異なり、自分自身のものの見方や周囲との関係性を変えることでしか解決に近づけない課題を指す*4)。

つまり、リーダーシップを発揮していくということは、他者との関係性をより望ましい形に作り替えていくことによって、複雑な課題が山積する状況を「他者と共に」乗り越えていこうという試みに他ならない。

周囲との良好ではない関係性を放置したまま1人で頑張り続けることは、マネジャー自身をさらに消耗させる。「自分がやるしかない」という状況は、関係性が変わらない限り継続する。課題解決のためだけでなく、マネジャー自身の疲弊を止めるためにも、関係性に手をつけることは避けられない。

もちろん関係性への働きかけが「唯一の解」であるとは言い切れない。業務プロセスの非効率が負荷の原因であれば、業務プロセス改善が有効であるし、人員配置のミスマッチが問題であれば、組織設計の見直しが必要だ。こうした「構造的な問題」は、関係性を変えるだけでは解決しない場合もある。

では、なぜ関係性への働きかけを優先すべきなのか。それには、2つの理由がある。第1に、関係性の変化は他のあらゆる取り組みの「土台」になるからだ。業務改善も、制度改革も、それを推進するのは人であり、人と人との関係性のなかで実行される。関係性が機能していなければ、どんな施策も形骸化しやすい。逆に関係性が変わると、他の取り組みの効果も高まりやすくなる。第2に、マネジャー自身が今すぐ着手できる現実的な手段だからだ。組織設計や人事制度の変更は、マネジャー個人の権限では動かせないことが多い。しかし、自組織内の関係性、もしくは関連部署との関係性であればマネジャーが意図して変化を加えることはできる。

こうした関係性の重要性について言及しているのが、MITのダニエル・キムが提唱する「成功の循環モデル*5」だ。このモデルは、組織のパフォーマンスが「関係の質」を起点として、思考の質・行動の質・結果の質へと連鎖することを示している。関係の質が高まると、メンバーは互いを尊重し、安心して意見を言い合えるようになる。その結果、思考の質が上がり、前向きで創造的なアイディアが生まれやすくなる。そして思考の質の向上が、自発的で協力的な行動を引き出し、最終的に結果の質を高めていくというものである。要するに、まず関係の質を高めることを起点にするということが重要だという主張である。

関係性を変えるための実践――対話とナラティヴ

では、どうすれば他者との関係性を変えていけるのか。ここでは、その実践に向けた3つのアプローチを示したい。

(1)ナラティヴアプローチ
―自分と他者のナラティヴを探求する

多くのマネジャーや組織が適応課題に直面するのは、マネジャー自身がもつナラティヴに起因することが多い。

ナラティヴとは、物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のことだ*6。人は誰しも固有のナラティヴをもっており、そのナラティヴに基づいてごく自然に判断し、行動している。ナラティヴは、われわれが日々起こる出来事や経験を意味づけ続けることにより形成される。

例えば、過去の自身の上司が常に的確な指示を出す人だったマネジャーは「マネジャーは正解をもっているべきだ」というナラティヴをもち、メンバーから意見を求められる前に先回りして結論を出してしまう。自身が独力で成長してきたマネジャーは「困難は1人で乗り越えてこそ成長できる」というナラティヴをもち、メンバーが困っていても手を差し伸べることをためらう。本人は良かれと思ってそうしているのに、メンバーには「頼りづらい」「放置されている」と映っている。こうしたすれ違いが積み重なると、関係性に影響が出てくる。

自分のナラティヴは、自分1人では気づきにくい。しかし、他者から「問われて語る」ことで、不思議と自分自身への気づきが生まれる。

同時に、他者のナラティヴに触れることも重要だ。自分とは異なるナラティヴに触れることで、「こういう見方もあるのか」という新たな解釈が生まれ、自身のナラティヴが相対化される。自分のナラティヴに「正しい・間違い」はない。しかし、多様なナラティヴを知ることで、現実に対する解釈の幅が広がり、これまでとは異なる行動の選択肢が生まれてくる。こうしたナラティヴ・語りに目を向ける取り組みはナラティヴアプローチと呼ばれている(図表2)。

<図表2>ナラティヴ=解釈の枠組み

(2)対話
―お互いの解釈の枠組みを変えるプロセス

ナラティヴアプローチを機能させるのが「対話」だ。ここでいう対話とは、単なる情報共有や意見交換ではない。お互いのナラティヴを持ち寄り、それぞれの解釈の枠組みを変えていく行為のことだ。対話においては、いくつかの重要なポイントがある。「答えを出そうとせず、お互いの見方をオープンに話す」「一般論ではなく、自分の言葉で語る」「価値判断を保留する」「『人それぞれだよね』で終わらせない」――これらは、対話を単なる会話で終わらせず、お互いのナラティヴに触れるための姿勢だ。

お互いのナラティヴが交換される対話を促進することは、組織における関係性を変える最も直接的なアプローチとなる(図表3)。

<図表3>対話を通じてお互いのナラティヴを共有する

(3)360度フィードバックの活用
―関係性に光を当てるサーベイ

組織における関係性を見える化し、自分と他者のナラティヴへの気づきを促す上で、360度フィードバックのような定量化できる指標は有効となる。関係性の状態は目に見えにくいため、対話のテーマにしようと思っても手掛かりが少ない。そこで、組織の構成員の複数の立場から、今どのような関係性がこの組織に生まれているのか?ということに対する認識をサーベイの形で得ることで、対話の手掛かりとできる。すでに何らかの組織サーベイを取得している場合はその結果を活用して対話をスタートすることができる。

組織開発へのつながり――マネジャーの変容が組織を変える

ここまで、マネジャー個人を起点に関係性を変えるための考え方について論じてきた。しかし、マネジャーの行動は、職場全体の関係性を変える起点となり得る。

マネジャーが対話のあり方を変えることで、メンバーとの間に新しい関係性が生まれる。その変化は少しずつ、しかし確実に職場全体に広がっていく。職場内の関係性が変わると、メンバーが自ら考えて動き始める。そうした変化の積み重ねが、やがて組織風土そのものを変えていく。すなわち、マネジャーのリーダーシップ開発は、組織開発の入り口であるといえる。

このようにマネジャーのリーダーシップ開発を組織開発につなげるために重要なのは、職場での対話実践を継続できるよう組織として支援することだ。対話の実践の成果を組織サーベイなどで定期的に可視化し、PDCAサイクルを回すこと。そして、組織のなかでの対話をタテ・ヨコ・ナナメに広げていくことである。もちろん業務面の課題を巡る議論の時間は重要だが、そのなかでお互いの背景・想いを語る時間が少しでも作れれば、関係者がどのようなコンテクストのなかで頑張っているかという他者のナラティヴに気づくことができ、広く関係者同士の関係性開発にも寄与することになる。――こうした継続的・重層的なアプローチが、真の意味での組織開発につながっていく。

個人の能力開発と組織開発は、対立するものではない。むしろ、マネジャーを起点とした関係性の変化が、職場から組織全体へと波及していくプロセスこそが、持続的な組織変革の本質ではないだろうか。

マネジャーは「正解をもっているべきだ」というナラティヴを手放し、メンバーと共に考え、共に創る。そのマネジャーの小さな一歩が、組織全体を変える大きな変化の起点となる。これからのリーダーシップとはこのような動きを創り出すことに他ならない。

それと同時に、組織として何を目指すのか?というビジョンや、自組織でどういう行動が重視されるのか?といったバリューなど、組織の向かう指針になることも組織を変えていく上では欠かせないものである。組織内の関係性を変えていくことと並行して、こうした指針づくりをメンバーと共に行っていくことで変革がパワフルに進められるようになる。

対話型リーダーシップ開発施策の一例

最後に、対話型のリーダーシップ開発施策の一例を紹介しておきたい。リクルートマネジメントソリューションズでは、360度サーベイを活用して組織の状態とリーダーシップの状態を可視化した上で、対話によるリーダーシップ開発を行う研修(LDP)*8を提供している。ここまで見てきたような状況に置かれているマネジャーが他者との関係性を変えていくことで、望ましい組織の未来を実現していくことの一助となることを目指したものである(図表4)。

<図表4>対話型リーダーシップ開発施策のプロセス

2日間のプログラムのなかで、参加したマネジャーが対話を通じて他者のストーリーに触れていくことで、囚われから解放されていき、改めて職場で新たな関係性を築いていくことに動機づく姿が多く見られる。「他者を引っ張るリーダーには自分はなれないが、皆の横に立って共に歩むリーダーであることはできそうだ」――そんな感想が受講者から出ることがある。まさにこれは、マネジャーのなかでリーダーシップ観の転換が起こっているといえるだろう。

研修後はマネジャーが職場で他者との関係性を変えていく対話をスタートすることになるわけだが、そこには難しさもはらんでいる。

マネジャー自身は研修で対話を経験し、その効力感をもっているが、職場のメンバーはそうではない。いつもと違うマネジャーの様子に戸惑うこともあるだろう。必ずしも最初から対話がうまくいくわけではないが、マネジャーが他者のナラティヴに目を向けてメンバーの話を傾聴するという態度は必ず伝わっていく。

実際の研修者の報告でも、「メンバーのこれからのキャリア展望については、これまであまり聞いてこなかったが、こちらが関心をもって聞くと本音を話してくれた」「これまでは、何か問題があると、言い訳に聞こえる報告が多かった。それはこちらが『こうあるべき』を押し付けていた部分もあったからだと思う。最近は、実はこういう状況になっていて……と自身の状況も含めてオープンに話してくれることが増えてきた」といったようなメンバーの変化が共有される。一つひとつは小さな変化かもしれないが、確実に関係性が変わるきっかけになっている*9。

これまでのやり取りの積み重ねで生まれた関係性は、一朝一夕には変わらない。日々のやり取りを変えていくほかないが、その際に重要なのは小さな変化を観察し、意味づけ、継続していくことである。

そうして生まれた小さな兆しが、やがて大きなうねりとなって組織に変化を生み出すことを望んでやまない。

*1 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2023)『RMS Message vol.69(2023年2月号)』.

*2 石川淳(2016)『シェアド・リーダーシップ―チーム全員の影響力が職場を強くする』中央経済社.

*3 Komives, S. R., Lucas, N., & McMahon, T. R.(2017)『リーダーシップの探求―変化をもたらす理論と実践』(日向野幹也監訳、泉谷道子・丸山智子・安野舞子訳)早稲田大学出版部.

*4 Heifetz, R. A., Grashow, A., & Linsky, M.(2017)『最難関のリーダーシップ―変革をやり遂げる意志とスキル』(水上雅人訳)英治出版.

*5 Kim, D. H.(2001)“What Is Your Organization’s Core Theory of Success?” In Organizing for Learning: Strategies for Knowledge Creation and Enduring Change. Pegasus Communications.

*6 宇田川元一(2019)『他者と働く―「わかりあえなさ」から始める組織論』NewsPicksパブリッシング.

*7 やまだようこ(2006)「質的心理学とナラティヴ研究の基礎概念―ナラティヴ・ターンと物語的自己」『心理学評論』49(3),436–463.

*8 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2025)「対話×360度フィードバックによるリーダーシップ開発」.

*9 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(2026)「対話と自己開示が生んだマネージャー層の変化――管理職研修で得られた手応えと可能性」.

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.83 特集2「これからの時代に求められるリーダーシップとは?」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。

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執筆者

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サービス統括部HRDサービス開発部
トレーニングプログラム開発グループ
主任研究員

木越 智彰

ビジネス系出版社にて書籍の編集・企画業務に携わった後、2009年にリクルートマネジメントソリューションズに入社。海外事業の立ち上げ・専属トレーナーのマネジメント業務を経験し、現在は研修の企画開発に従事。主にマネジメント領域・リーダーシップ開発領域を担当する。

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